PVCとは(塩ビ・ポリ塩化ビニル)

軟質-半硬質-硬質 3種類あるPVC(塩ビ・ポリ塩化ビニル)

PVC(塩ビ、ポリ塩化ビニル、英称:Polyvinyl Chloride)は、塩化ビニル(クロロエチレン)の重合反応で得られる高分子化合物で、熱により軟化する為、熱可塑性樹脂に分類されます。
塩ビ、ビニール(ビニールシート)等と呼ばれ、軟質はソフトビニール(Soft Vinyl)(ソフトビニールシート)とも呼ばれます。
塩ビの元になる塩化ビニルモノマーを重合させただけの樹脂は硬くて脆く、結晶質で、紫外線により塩素原子が離脱し劣化黄変し易い弱点が有り、この弱点を克服して広く工業用途に使用出来る様な製法を施すことでポリ塩化ビニルとなります。 柔らかくする目的で、PVCを柔らかくする働きの有る添加剤(可塑剤)を加えて配合します。

可塑剤はフタル酸エステル等が有り、添加量によりPVCは軟質・半硬質・硬質と大別されます。

PVCの特徴
PVCシート
PVC製のパイプ

PVCとは、優れた耐水性・耐酸性・耐アルカリ性・耐溶剤性を持ち、また、難燃性、電気絶縁性、等の物性を備えています。 このような優れた物性を持ちながら、安価で、多くの用途に使用されています。組成の60%が工業塩から得られる塩素で有る為、原油依存度が低く省資源であることも特徴です。 基本的に高耐久だが低温環境で衝撃値が低下し脆くなる性質が有り、比重は1.3程度、熱伝導率が小さく線膨張係数が大きいです。

PVCの長所
PVC材質の特性
  • 耐候性が良く、太陽の紫外線等、屋外の環境でも耐久期間が長い・・・少メンテナンス性
  • 耐薬品性が良く、アルコールやアルカリ、酸への耐性有り
  • 難燃性が高く、燃え難い性質であり、物質特性が安定
  • 電気絶縁性が良く、通電しない
  • 着色性が良く、多色に対応
  • 組成の60%が工業塩から得られる塩素で有る為、原油依存度が低く省資源
PVC素材の加工特性
  • 軟質から硬質まで対応
  • 製造過程では、射出成型や真空成型、ブロー成形、押出成型、カレンダー成型で量産
  • 製品加工では、切削や溶接、(可塑剤の配合で)様々な形状に対応
  • 溶液状にしたポリ塩化ビニルに別の素材を浸してコーティングに対応
  • 表面加工では、型押し、エンボス加工(表面の凸凹)にも対応
  • 印刷適性が良く、(表面の追加工が無くても)様々な外面の印象に仕上がる
PVC素材のコスト
  • 5大汎用プラスチックの中でも安価な位置づけ
PVCの短所
PVC材質の特性
  • 有機溶剤などに弱く侵される場合がある
  • 耐熱性は約60~80℃で軟化
  • 耐衝撃性は低い
  • 比重約1.3(水に沈みます)
PVC製品の加工特性
  • 常用温度はやや低い
  • 低温時の衝撃強度が低く、使用により割れ・裂けが生じる場合がある
  • 軟質塩ビの場合、配合している可塑剤が滲み出す(ブリード・移行)
  • ブロッキングを来す為、印刷面と反対側のPVCが密着させると接着が発生
    ・例.PVCのポケットに写真等を入れてしまうと剝がれなくなる状態
PVC材料の廃棄
  • 難燃性の為、適切な焼却設備が必要
PVCの用途
上下水道管用パイプ
サッシ
ブックカバー
ビニールバッグ
ビニールハウス
  • 資材としてのPVCの用途
    上下水道管用パイプ、電線被覆、雨どい、サッシ、床材、壁紙、農業用資材(農ビ等)、3Dプリンター材、ビニールレザー、ターポリン
  • 加工品のPVCの用途
    自動車内外装品、ホース、防水シート、ビニールハウス、包装材、医療用パック、輸血チューブ、カテーテル
  • 装飾等のPVCの用途
    バッグ、ポーチ、ケース、テーブルクロス、カッパ、ラップ、ブックカバー、縄跳び、バブルサッカーボール
  • 様々な分野でも幅広いPVCの用途
    PVC(塩ビ・ポリ塩化ビニル)とは、樹脂の中でも、軟質から硬質までバラエティに富んで、汎用性が高く、ポリエチレンPEやポリプロピレンPPと同様、幅広い用途・様々な分野で活躍してます。
非フタル酸(ノンフタル酸)系PVCとは

フタル酸エステル類でない可塑剤が配合された塩ビPVC樹脂を呼称します。
プラスチックを柔らかくする可塑剤は樹脂と結合していないので、時間の経過に伴い可塑剤が気散してPVC樹脂が硬化したり、可塑剤が溶出したりすることがあり、PVCの歴史の中で、20世紀末頃に可塑剤の種類で環境や健康に危惧される経緯が有ります。
これより各国で(DEHP)等6種類の可塑剤に、食品が直接触れる容器や包装、乳幼児が口に接触することを目的とするおもちゃへの使用制限や禁止の規制が敷かれてます。

赤ちゃん
地球儀
おもちゃ
おもちゃ
ビニールバッグ

現在では、2003年環境省にてフタル酸エステルには環境ホルモン作用が無かったことが報告されており、また、日米欧が実施したDEHPリスク評価では何れも「更なる措置を講ずる必要はない」との科学的結論に至ってます。

PVC 艶 蛍光 カラーシートとは

一般的に透明なフィルムやシートのイメージのポリ塩化ビニルPVC樹脂ですが、着色性に優れ、一般PVCの配合・製法をベースに顔料・染料を添加することでカラー透明・カラー半透明・各種淡色から濃色・蛍光色等カラーバリエーションが豊富で、鮮やかなエンタメ系やビジュアル系グッズの企画でも活躍してます。

塩ビバッグ
ランドセル
PVC製のカラーボール
塩ビカラーシート
塩ビカラーシート
PVCのナゼ~外観・梨地~

一般的にPVCには、「透明」「梨地」が有ります。
PVCフィルムを製造する際に、絞ロールにより表面に柄を付加した材料となります。
梨地と聞き、果物の梨の皮の様にブツブツが有り、ザラザラ?と思ってました。
材料の表面の柄は超微細の凹凸をつけているだけなので、外観はスリガラスの様に見えますが、表面はフラットで、ビニール素材特有のベタベタくっつく感じでなくサラサラした半透明のフィルム材です。

PVC 青味透明とは

透明性、艶などの印象・イメージのポリ塩化ビニルは本来、黄褐色の色相で、経時変化に伴い、日光の紫外線等で劣化して色味が黄変します。
このため、フィルムの製造では顔料を加えて黄変を軽減しています。青味顔料は、配合される量により見た目の印象が違い、色味が薄いほど変化(劣化)し易い傾向にあります。メーカーで透明度と青味のバランスの取れたより良い配合が成されてます。

PVCのサンプル

この青味は、材料の時間経過に伴い青味が抜ける性質も有る為に、製造から時間の経った(古くなった)材料は青味が抜けて、くすんだ色相となり、劣化し易い状態と考えられています。
例えば、繰返しのリピート商材で、お客様が過去のサンプルをお持ちで、青味掛かった新品を見た際に、材料が違う等ご指摘の事例は意外に多いです。

PVCの可塑剤について

可塑剤とは、酸とアルコールから合成される化合物で、一般にエステルと言われるものです。
これらの酸とアルコールを様々に組合せることで、多種多様な可塑剤が作られ、20~30種類が一般的に使用されています。
塩ビPVCに添加される可塑剤には、塩ビとよく馴染み(相溶性)、最少量で必要な柔らかさを実現させ(可塑化効率)、空気中に揮散し難く(低揮発性)、水へ溶け出したり他素材に移行しない(低移行性)等の性能が要求されます。
使用する製品に必要な性能に合わせて可塑剤が選択されます。

PVC可塑剤の種類

様々な組合せの有る可塑剤の種類について、ご紹介します。 可塑剤は配合により、フタル酸系、アジビン酸系、リン酸系、トリメリット酸系、クエン酸系、エポキシ系、・・・などなど数多く使用されています。 それらの中で、“フタル酸系”と呼ばれる種類が可塑剤の生産量の約80%取扱われています。 特に、フタル酸ビス ジ-2-エチルヘキシルは一般的に汎用可塑剤として使用され近年の資料で、フタル酸系の中では約60%、可塑剤全体でおよそ半分を占めているといわれています。

PVC ダイオキシンの影響とは

ダイオキシンとは、人に対して発ガン性や甲状腺・免疫機能低下、生殖障害などを引き起こす可能性のある有機化合物の総称です。
ダイオキシンには構成元素として、塩素が含まれてます。1990年代に、塩素系プラスチックがダイオキシン類の主要発生源と考えられ、社会的問題として浮上し、塩素を含むPVC・塩ビ樹脂がダイオキシン生成の元凶と扱われた時期がありました。
その後の各方面での研究が進み、主要発生源は食塩によるものという研究結果もあります。塩素は、食品、調味料、紙類・衣類にも含まれており、また、塩素化合物は、空気中にも浮遊しており、森林火災でも発生するようです。

ジオキシン化学記号
煙

現在では、環境省のパンフレットに記載されてますが、ダイオキシン類は塩素系プラスチックのみでなく、塩素と芳香族化合物を含むゴミ・廃棄物を焼却する際の焼却方法や排ガス処理の方法に起因することが判っています。
1999年に、政府はダイオキシン類特別措置法を制定し、焼却炉の性能向上改善・整備、また、ゴミの分別収集強化を行い、国の施策で生成量は劇的に削減され、2000年を超えた頃には排出量が約95%減少とされてます。
大気中の濃度(平均値)も環境基準値の約1/32とのことです。

ダイオキシン類の排出総量の推移

1999年に環境省より「焼却条件によりダイオキシン排出は抑えられ、塩ビの影響は少ない」と公表されてます。焼却に伴うダイオキシン発生の懸念はなくなっているのですが、問題視された当時の報道の打撃が勝ってしまい、一部に認知されないという現状が有る様です。

PVC 環境ホルモンの安全性とは

環境ホルモンとは、正式には、内分泌かく乱化学物質(Endocrine Disruptors)と呼ばれるもので世界保健機関(WHO)では、動物や人間の生体内に入った場合、生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響をもたらす物質のことです。
1950年頃から環境ホルモンが問題視されてます。PVCを柔らかくにする為に含まれる可塑剤が環境ホルモンへの影響が懸念されました。
可塑剤は、一般的に20~30種類有り、汎用的に使用されてるのがフタル酸エステル系の可塑剤です。中でもすべての可塑剤の約半分を占めるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)DEHPは、人体への影響が気にされ、可塑剤の安全性に関して研究・調査が進められました。

安心イラスト
食物連鎖イラスト
花
猫

1940年代から内外で多角的に研究が進められ、様々な安全試験が行われており、可塑剤の急性毒性は食塩や砂糖よりも低く、毒性無しのレベルで、皮膚刺激性なども人を含む動物の皮膚に作用を及ぼすレベルでは無いとのことです。
2000年に国際がん研究機関は、無刺激または微刺激の範囲で、人に対する発がん性については、水道水と同じレベルと確認されてます。
2003年に環境省は、環境ホルモン戦略計画SPEED'98で調査した結果、DEHPフタル酸エステルは環境ホルモン作用は無いことを確認し公表してます。
2005年に産業総合技術研究所による詳細リスク評価では、生態系やヒトに対するリスクは懸念されるレベルになく、現行以上の制限措置は不要と結論付けられてます。
2012年経産省の改正化審法に即し、化学物質評価研究機構CERIによるリスク評価でも懸念されるリスクが無いことが確認されてます。

おしゃぶり
ひよこおもちゃ
自動車おもちゃ

齧歯類への生殖毒性は哺乳類では現れないが、予防的観点で小児用玩具等への使用が日米欧でほぼ同じ内容で制限されてます。 上記の様に、塩ビ樹脂の安全性が確認され、環境に影響があるという認識は是正されてるのですが問題視された当時の報道の打撃が勝ってしまい、一部に認知されないという現状が有る様です。