可塑剤(かそざい)とは/Plasticizer
可塑とは「やわらかく形を変えやすい」という意味を持ち、可塑剤は主に塩ビPVCを中心とした樹脂に加えることでプラスチックを柔らかくする添加剤の総称となります。
粘土細工は粘土に水を加えて柔らかくしますが、可塑剤はその水と同じ様な役割です。
殆どは酸とアルコールで生成されるエステル化合物で常温では無色透明の液体です。
特にポリ塩化ビニルは可塑剤を添加することで色々な特性に配合され、用途や製品により20~30種類の可塑剤が存在し、その中でフタル酸系添加剤が約80%を占めます。
可塑剤の役割と性質
可塑剤は、純粋な合成樹脂だけでは硬くて脆い樹脂に対して、その成形加工配合される添加剤です。
消しゴムを例にします。
もともとゴムで作られていた消しゴムは、近年はほとんどがプラスチックで作られています。その形を整えるためと、鉛筆で書いた紙面のカーボンを消しゴムに移し取るための粘着性を持たせる目的で、可塑剤を加えてます。
その可塑剤は、プラスチックと完全に反応してないので、イメージとしては水を吸収したスポンジの様な状態で消しゴムに配合されてます。
可塑剤は、プラスチックの網目構造中に入り込み、分子間結合を弱め、樹脂を軟化させるので、樹脂と可塑剤の相溶性(親和性)が重要です。
相溶性が悪いと可塑剤が分離し易くなり、軟化し難くなります。
可塑剤は、化学的に樹脂と結合・固定されていないため、樹脂中を自由に動ける状態です。これより、添加・配合された樹脂は、時間の経過とともに気散や揮発、染出しが起こり、可塑剤が減少します(可塑剤が抜けます)。
その結果、プラスチックは硬化や変色などの劣化を引き起こします。
例えば、ホースであれば紫外線や雨風、経年劣化により可塑剤が流れ出し、可塑剤が抜けると、パイプの様に硬く脆くなります。また、一般的に、低温環境下では、樹脂も可塑剤も硬くなる傾向が有ります。
可塑剤の移行
移行とは、或る状態から別の状態へ移っていくことを意味します。
英語では、transfer(移す、渡す)、move(動かす、移動させる)、trasition(移行、変遷)となります。
可塑剤の移行とは、添加された可塑剤が経年で滲み出して表面がベタついたり、他の樹脂と接触すると可塑剤が移ります。これは、ブリード現象とも言われます。
ブリードBleedとは、滲む、流れ出るという意味が有ります。
可塑剤の移行は、とても長い時間を掛けゆっくりと移行しますが、高温環境下、強い圧力で接触、また、溶剤の使用で、移行し易い傾向が有ります。
例えば、消しゴムをプラスチックの筆箱などに長い間入れっぱなしにしておくと貼り付いたり、色が移ったりしますが、これは可塑剤の染み出し・移行が原因です。
可塑剤の分類と主な種類
各国の使用規制や含有量制限に対応する為、大きくフタル酸系と非フタル酸系に分類されます。
フタル酸系(Phthalate)
コストパフォーマンスが高く、効果的に柔軟性が得られ、広範囲に使用
- DEHP(DOP)
多くの企業で大量に生産されており、様々な別名が有ります
略号 | 化学物質名 (和名) |
化学物質名 (英名) |
---|---|---|
DEHP | フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | Di-2-ethylhexyl phthalate |
フタル酸ビス-2-エチルヘキシル | Bis-2-ethylhexyl phthalate | |
DOP | フタル酸ジオクチル | Dioctyl phthalate |
DINP | フタル酸ジイソノニル | Di-isononyl phthalate |
DIDP | フタル酸ジイソデシル | Di-isodecyl phthalate |
DBP | フタル酸ジブチル | Dibutyl phthalate |
BBP | フタル酸ブチルベンジル | Butyl benzyl phthalate |
DIBP | フタル酸ジイソブチル | Diisobutyl phthalate |
DNOP | フタル酸ジ-n-オクチル | Di-n-Octyl phthalate |
非フタル酸系(non-Phthalate)
フタル酸エステル以外、非フタル酸・ノンフタル酸系
- トリトメット酸系(Trimellitate)
耐熱性で優位
略号 | 化学物質名 (和名) |
化学物質名 (英名) |
---|---|---|
TOTM | トリメリット酸トリオクチル | Trioctyl trimellitate |
- ジカルボン酸系(carboxylate)
耐寒性に優位
略号 | 化学物質名 (和名) |
化学物質名 (英名) |
---|---|---|
DOTP | テレフタル酸ジオクチル | Dioctyl telephthalate |
DEHT | テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル | Di-2-ethylhexyl terephthalate |
DINCH | ジ-イソノニル-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸 | Di-iso-nonyl-1,2-cyclohexane dicarboxylate |
- アジピン酸系(adipic acid)
ジカルボン酸の一種 - 脂肪酸系
低温柔軟性に優位 - ポリエステル系
低揮発で、保留性に優位 - エポキシ系
耐熱性に優位で、熱安定助剤としても優れる - リン酸系
難燃性に優位
可塑化材料とは
可塑化(Plasticating)とは、合成樹脂などに可塑剤を添加し、成型加工特性を上げ、また、プラスチックを柔軟にすることです。塑性(Plasticity)も同類語です。
可塑化材料とは、可塑化されたプラスチック材料、最終製品を意味します。
可塑化材料の定義
(REACHにおける用語の定義より)
- ポリ塩化ビニルPVC、ポリ塩化ビニリデンPVDC、ポリ酢酸ビニルPVA、ポリウレタンPU
- ポリマーフォーム、ゴム材料
- 表面、滑り止め、仕上、のコーティング
- 接着剤、シーラント、塗料、インク
可塑化材料の懸念と各国の動向
可塑剤の中でも広く使用されてきたフタル酸エステル類は、一般的に蒸気圧が低く、室温では揮発しにくい性質を持っています。
しかし、ポリ塩化ビニル(PVC)などの製品を加工する際、高温で処理する為、温度上昇により一部成分の揮発の可能性が懸念され、その際に環境や健康に影響を与える可能性が懸念されてきました。
このような理由から、日・米・欧をはじめ各国で、特定のフタル酸系可塑剤に対して予防的な措置として、使用制限が設けられています。
フタル酸エステル系可塑剤の一つであるDEHP(DOP)は、有害性に関して最も多くの調査が行われてきた物質であり、医療用途を含め広く使用されてきました。
これまでのところ、ヒト(人)への直接的な健康問題が確認された明確な事例は報告されていません。日・米・欧の公的なリスク評価書においても、現行使用条件におけるリスクは低く、追加的な規制は必要ない、と結論付けられています。