可塑剤(かそざい)とは/Plasticizer
可塑とは「やわらかく形を変えやすい」という意味を持ち、可塑剤は主に塩ビPVCを中心とした樹脂に加えることでプラスチックを柔らかくする添加剤の総称となります。
粘土細工は粘土に水を加えて柔らかくしますが、可塑剤はその水と同じ様な役割です。
可塑剤の役割と性質
可塑剤は、純粋な合成樹脂だけでは硬くて脆い樹脂に対して、その成形加工配合される添加剤です。 消しゴムを例にします。 もともとゴムで作られていた消しゴムは、近年はほとんどがプラスチックで作られています。その形を整えるためと、鉛筆で書いた紙面のカーボンを消しゴムに移し取るための粘着性を持たせる目的で、可塑剤を加えてます。 その可塑剤は、プラスチックと完全に反応してないので、イメージとしては水を吸収したスポンジの様な状態で消しゴムに配合されてます。可塑剤の移行
移行とは、或る状態から別の状態へ移っていくことを意味します。 英語では、transfer(移す、渡す)、move(動かす、移動させる)、trasition(移行、変遷)となります。 可塑剤の移行とは、添加された可塑剤が経年で滲み出して表面がベタついたり、他の樹脂と接触すると可塑剤が移ります。これは、ブリード現象とも言われます。 ブリードBleedとは、滲む、流れ出るという意味が有ります。 可塑剤の移行は、とても長い時間を掛けゆっくりと移行しますが、高温環境下、強い圧力で接触、また、溶剤の使用で、移行し易い傾向が有ります。可塑剤の分類と主な種類
各国の使用規制や含有量制限に対応する為、大きくフタル酸系と非フタル酸系に分類されます。フタル酸系(Phthalate) コストパフォーマンスが高く、効果的に柔軟性が得られ、広範囲に使用
- DEHP(DOP) 多くの企業で大量に生産されており、様々な別名が有ります
略号 | 化学物質名 (和名) | 化学物質名 (英名) |
---|---|---|
DEHP | フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | Di-2-ethylhexyl phthalate |
フタル酸ビス-2-エチルヘキシル | Bis-2-ethylhexyl phthalate | |
DOP | フタル酸ジオクチル | Dioctyl phthalate |
DINP | フタル酸ジイソノニル | Di-isononyl phthalate |
DIDP | フタル酸ジイソデシル | Di-isodecyl phthalate |
DBP | フタル酸ジブチル | Dibutyl phthalate |
BBP | フタル酸ブチルベンジル | Butyl benzyl phthalate |
DIBP | フタル酸ジイソブチル | Diisobutyl phthalate |
DNOP | フタル酸ジ-n-オクチル | Di-n-Octyl phthalate |
非フタル酸系(non-Phthalate) フタル酸エステル以外、非フタル酸・ノンフタル酸系
- トリトメット酸系(Trimellitate) 耐熱性で優位
略号 | 化学物質名 (和名) | 化学物質名 (英名) |
---|---|---|
TOTM | トリメリット酸トリオクチル | Trioctyl trimellitate |
- ジカルボン酸系(carboxylate) 耐寒性に優位
略号 | 化学物質名 (和名) | 化学物質名 (英名) |
---|---|---|
DOTP | テレフタル酸ジオクチル | Dioctyl telephthalate |
DEHT | テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル | Di-2-ethylhexyl terephthalate |
DINCH | ジ-イソノニル-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸 | Di-iso-nonyl-1,2-cyclohexane dicarboxylate |
- アジピン酸系(adipic acid) ジカルボン酸の一種
- 脂肪酸系 低温柔軟性に優位
- ポリエステル系 低揮発で、保留性に優位
- エポキシ系 耐熱性に優位で、熱安定助剤としても優れる
- リン酸系 難燃性に優位
可塑化材料とは
可塑化(Plasticating)とは、合成樹脂などに可塑剤を添加し、成型加工特性を上げ、また、プラスチックを柔軟にすることです。塑性(Plasticity)も同類語です。 可塑化材料とは、可塑化されたプラスチック材料、最終製品を意味します。可塑化材料の定義 (REACHにおける用語の定義より)
- ポリ塩化ビニルPVC、ポリ塩化ビニリデンPVDC、ポリ酢酸ビニルPVA、ポリウレタンPU
- ポリマーフォーム、ゴム材料
- 表面、滑り止め、仕上、のコーティング
- 接着剤、シーラント、塗料、インク
可塑化材料の懸念と各国の動向
可塑剤の中でも広く使用されてきたフタル酸エステル類は、一般的に蒸気圧が低く、室温では揮発しにくい性質を持っています。 しかし、ポリ塩化ビニル(PVC)などの製品を加工する際、高温で処理する為、温度上昇により一部成分の揮発の可能性が懸念され、その際に環境や健康に影響を与える可能性が懸念されてきました。 このような理由から、日・米・欧をはじめ各国で、特定のフタル酸系可塑剤に対して予防的な措置として、使用制限が設けられています。 フタル酸エステル系可塑剤の一つであるDEHP(DOP)は、有害性に関して最も多くの調査が行われてきた物質であり、医療用途を含め広く使用されてきました。 これまでのところ、ヒト(人)への直接的な健康問題が確認された明確な事例は報告されていません。日・米・欧の公的なリスク評価書においても、現行使用条件におけるリスクは低く、追加的な規制は必要ない、と結論付けられています。(可塑化材料に配合する)可塑剤に関する各国の法規制・使用制限とは
可塑剤、特にフタル酸エステル類は各国・各地域で法規制、使用制限が敷かれてます。 参考に、地域別の主な規制と代表的な制限を表記します。主要地域ー管轄 | 主な規制 | 主な制限(例) |
---|---|---|
EU ECHA(欧州化学品庁) | REACH Annex XVII RoHS(初代RoHS、RoHS2、RoHS3) | フタル酸類(DEHP/DBP/BBP/DIBP)を各0.1%以下(成形品全般) 電気電子均質材料 |
米国 CPSC(米国消費者製品安全委員会) | CPSIA / 16 CFR Part 1307 | 子供用玩具・育児用品で8種類のフタル酸を各0.1%以下 |
日本 厚生労働省 | 食品衛生法(指定おもちゃ) | DBP/DEHP/BBPは全体で禁止、DINP/DIDP/DNOPは口に触れる部分で各0.1%以下 |
中国 SAMR(国家市場監督管理総局) | GB 6675(玩具安全基準) | DBP/BBP/DEHP/DNOP/DINP/DIDPを各0.1%以下 |
カナダ Health Canada(カナダ保健省) | Phthalates Regulations(フタル酸規制) | 玩具・育児用品のビニル部に含まれるフタル酸を各0.1%以下 |
韓国 MFDS(食品医薬品安全処) | 医療機器関連規制 | 輸液セットや血液バッグ等でDEHP/DBP/BBPの使用を制限 |
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【memo】代表的な規制の補足
(EU)
REACHとは、Registration, Evaluation, Authorisation, and Restriction of Chemicalsの略称で、登録、評価、認可、制限、そして化学物質のEU域内での規制(Regulation)を意味します。
RoHSとは、Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment の略称で、電気・電子機器中の特定有害物質使用制限指令です。
RoHSは、初代RoHSで6物質が規制され、改定RoHS2、フタル酸4種追加改正RoHS3とバージョン有り、EU公式では、Rohs3はRoHS 2の改正指令とされてますが、実務上はRoHS 3の呼称も広く使われています。
(米)
CPSIAとは、Consumer Product Safety Improvement Actの略称で、消費者製品安全性改善法です。
(日)
食品衛生法とは、日本の食品の安全を守る基本法で、器具・容器包装・おもちゃ等に使われる材料も規制対象です。
(EU)
REACHとは、Registration, Evaluation, Authorisation, and Restriction of Chemicalsの略称で、登録、評価、認可、制限、そして化学物質のEU域内での規制(Regulation)を意味します。
RoHSとは、Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment の略称で、電気・電子機器中の特定有害物質使用制限指令です。
RoHSは、初代RoHSで6物質が規制され、改定RoHS2、フタル酸4種追加改正RoHS3とバージョン有り、EU公式では、Rohs3はRoHS 2の改正指令とされてますが、実務上はRoHS 3の呼称も広く使われています。
(米)
CPSIAとは、Consumer Product Safety Improvement Actの略称で、消費者製品安全性改善法です。
(日)
食品衛生法とは、日本の食品の安全を守る基本法で、器具・容器包装・おもちゃ等に使われる材料も規制対象です。