パリ協定の長期目標、
カーボンニュートラル

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上昇幅「2℃」と「1.5℃」の違い

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企業や団体が
排出ゼロに向けた競争に参加

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企業の排出削減目標の
グローバルスタンダード、SBT

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企業の気候変動対策を
積極的に後押しする、ESG投資

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事業活動そのものに気候変動への
対応を落とし込むことが大事

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60万年前から使うようになった
火の使用が温暖化の始まり

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19世紀 石化燃料の大量使用が
温暖化を招くと指摘され始める

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コロナの流行によって
CO2排出量が6%減少しましたが…

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10

世界に広がる
グリーンリカバリーの考え方

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パリ協定の長期目標、 カーボンニュートラル

 地球温暖化による世界の平均気温の上昇幅を2℃より低く抑えるために、温室効果ガスの排出を増加から減少へと転じさせ人類活動による排出を実質ゼロ、つまりカーボンニュートラルにすることが世界共通の長期目標となりました。それを取り決めしたのが2015年 第21回契約国会議COPのパリ協定です。
 パリ協定は、長期での温度目標や排出ゼロ目標などが明記された初めての国際条約で、京都議定書などそれ以前の国際条約では、こうした目標は一切取り決めせれていませんでした。もちろん従来も低炭素社会を目指す企業の取り組みなどはありましたが、このパリ協定で、低炭素を越えて排出実質ゼロの脱炭素社会を目標として明記したことは、二酸化炭素を排出することは良くないことであると方向づけることとなりました。

上昇幅「2℃」と「1.5℃」の違い

 平均気温の上昇幅の長期目標を「2℃」とし、さらにできれば「1.5℃」に抑える努力目標もパリ協定で追記されました。 その3年後2018年「1.5℃特別報告書」で、1.5℃までに抑えるには2030年に2010年比で45%の排出削減、2050年実質排出ゼロにする必要があると示されました。 2℃から1.5℃に抑えることで、気候変動による影響を目に見えて小さくすることが出来るようです。
 例えば熱波に見舞われる人口は2℃だと世界人口の28%で、1.5℃だと9%。洪水のリスクは、2℃だと現状の2.7倍、1.5℃だと2倍。その他、海面上昇、北極圏の海氷の減少、サンゴ礁の白化、水産資源の減少、などの面で1.5℃に抑えるよるリスクの低減が明らかにされました。 この報告書を基に、1.5℃、2050年実質排出ゼロ、カーボンニュートラルを目指す動きが国際的に動き始めることになりました。

企業や団体が排出ゼロに向けた競争に参加

 2019年9月ニューヨークで開かれた「国連気候行動サミット2019」で2050年実質ゼロエミッションを達成させるために各国に具体的現実的な計画を持って参集するよう呼びかけられ3ヵ月後に、気候野心同盟が発足。121の国、23の地域、454の都市、1961の企業・団体、74の投資家が参加し2050年にCO2排出を実質ゼロにすることを表明しました。2020年6月気候野心同盟と連動した国際キャンペーンRace To Zero がスタート。この活動には非国家アクターである67の地域、1049の都市、5230の企業、1091の団体、441の投資家が参加していて、すべて合わせると、全世界のCO2排出量の88%、GDPで90%、人口で85%をカバーしてより、国関係なく競争することでより効果的な活動になるだろうと言われています。

企業の排出削減目標のグローバルスタンダード、SBT

 企業が立てた自社の排出削減目標が科学的知見に沿った削減目標であり、外部から見ても高いレベルのものであると、SBTイニシアティブとして認められることになります。SBTイニシアティブは、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)によって2014年9月に設立され、パリ協定に沿った目標策定のグローバル・スタンダードとなっています。2022年2月8日現在、SBT認定取得済企業は、世界で1,154社 うち日本企業は154社となっています。

企業の気候変動対策を積極的に後押しする、ESG投資

 企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の各分野における非財務情報(ESG情報)を吟味して投資することをESG投資と言います。環境・社内・ガバナンスに配慮して事業を営んでいる企業を重視する投資の手法です。世界が脱炭素社会へと進んでいくことが規程路線と言われている中、気候変動対策に関する情報は、もっとも重視されるESG情報と言われていて、ESG投資家にとって、気候変動関連の開示情報は重要な判断材料となります。削減目標はSBTイニシアティブの認証を受けているか、2℃レベルの目標なのか、1.5℃レベルの目標なのか、サプライチェーンの排出削減にも取り組んでいるか、ESG投資家から問われる問われるようになりました。

事業活動そのものに気候変動への対応を落とし込むことが大事

 世界が脱炭素化の方向へと取り組みを進める時代を迎え、脱炭素化に貢献する製品・サービスを提供したり、使用したりすれば、顧客から選ばれやすくなり、新しいビジネスチャンスやブランド力をもたらす可能性が出てきます。一方エネルギーを大量に消費したりCO2を大量に排出する製品・サービスを提供したり使用したりすれば、消費者から選ばれにくくなるでしょう。
 2050年に世界が脱炭素社会を実現していることを前提に、自社のあるべき姿を描きつつ、長期的に事業戦略や目標を策定し、意思決定をしてしていくことが全世界的に不可欠となるでしょう。

60万年前から使うようになった火の使用が温暖化の始まり

 私たちの現在の暮らしは、石炭や石油を燃やして得たエネルギーを使うことで成り立っています。その結果、燃やした時に排出されるCO2が増えすぎて地球が温暖化し、気候変動が起こっています。そこでこれ以上の温暖化を食い止めようと、世界が協調して下した決断が、脱炭素です。人類が火をつかうようになったのは60万年前頃で、明るさや温かさを得るようになったり、獣から身をまもったり、出来るようになりました。人類の進化に特に大きな影響を及ぼしたのは加熱調理です。食べ物を火で加熱調理して柔らかくしたり栄養価が上がり、基礎代謝エネルギーを胃腸から脳に回すことが出来、脳の大きさが2倍の大きさになりました。

19世紀 石化燃料の大量使用が温暖化を招くと指摘され始める

 約2万年前頃から、人類は自ら火をおこし食べ物以外にも使うようになります。 土器や金属の斧、武器などを火で作り始めます。その頃から、17世紀まで木木材を燃やして火を利用していました。18世紀頃からは、石炭を燃やして蒸気エネルギーで動く蒸気機関が発明され産業革命が起きます。19世紀には、現在も使われている電気エネルギーが発明され、動力、照明、通信など幅広い分野で使われるようになりました。同時に電気をつくるための発電所が多く作られました。20世紀になると安価で大量に入手可能な石油が主なエネルギー源となります。石油はエネルギー源だけでなく、化学やプラスチックなど様々な産業を発展させます。19世紀頃から石炭石油などの石化燃料の消費が増え続け、それにより自然界で循環できないCO2が大気中に急増し、地球温暖化を招くと指摘され始めたのです。

コロナの流行によってCO2排出量が6%減少しましたが…

 2020年新型コロナウイルスの世界的な流行によって、世界経済は大きな打撃を受けました。IMF(国際通貨基金)によると、2020年の世界経済は3.3%のマイナス成長だったと推定されています。それに伴いエネルギーの使用量も減少し、その結果、CO2の排出量は前年比で約6%減少しました。
カーボンニュートラルに近づく、好材料には間違いありませんが、コロナが明けたあとにリバウンドする可能性があり、油断することは出来ません。2008年のリーマンショックの際も金融危機、経済停滞と同じくCO2の排出量は一旦減少したものの、その後復興と同時にリバウンドが起きて金融危機以前よりもCO2の排出量が増える事態が起きてしまいました。今回のコロナ禍のケースでも、コロナ禍以前と同じ化石燃料依存型の経済を続けていくならば、コロナ禍後にCO2排出量が急増する可能性が高いと推測できます。そこで「グリーンリカバリー」という概念が広がりを見せています。

10世界に広がるグリーンリカバリーの考え方

 グリーンリカバリーとは、新型コロナウイルスの世界的な流行によって落ち込んだ経済の回復を、気候変動対策も強化しながら進めていく考え方です。 2020年4月のベータースベルク会議(気候変動分野の非公式国際会合)では、約30の主要国が参加し、コロナ禍からの経済復興計画は、パリ協定やSDGSに沿ったものでなければならないことなどを確認しました。日本からは当時環境大臣小泉進次郎氏が参加しました。
グリーンリカバリーを早い段階で先導したのはヨーロッパの国々でした。例えばフランス政府は、コロナ禍で深刻な影響を受けているエールフランス航空への緊急支援を行うにあたり気候変動対策に関する条件を課しました。保有する航空機の効率を改善しCO2排出原単位を2030年に2005年比で半減させることを自主的に打ち出していましたが、フランス政府はそれに加えて2050年排出ゼロと見合う総量で削減目標を立てることを要求しています。