1廃プラスチックの廃棄の今と昔の違い
弊社が提携している国内ウェルダー工場では、生産時に抜きカスや加工に失敗したプラスチックゴミ、廃プラスチックがよく出ます。
それらのゴミは昔は、回収業者さんがトラックでやってきて、大体の量をみて値段をつけて、現金と交換で持ち帰ってくれたそうです。
ここだけの話、その現金を会社に申告せずポケットに入れてしまう人もいたとか。
しかし、環境問題が強く叫ばれるようになった昨今は、廃棄にはお金がかかるようになってしまい、その処分先も単体素材であれば、リサイクルされる可能性もありますが、溶着されたり、複合素材になったものの多くは、埋め立てされてしまうようです。
現金で買ってくれた時代と、現金を払って埋め立てされる時代、その潮目が変わった境は、1997年の中国の廃プラスチック輸入禁止令に私はあると思います。
実際、我々の業界の工場をトラックで回って廃プラスチックを買って集めて、コンテナに詰めて中国に売っていた人の話も聞いたことがあるのでそうではないかと思います。
2再生材料のデメリット
15年以上前にお客様から再生PPシートの継続案件のご注文があり、初回の納品をしましたが印刷が乗らないとのクレームを受け、改善策なくその案件はキャンセルとなったことがありました。
当初試作品では印刷テストで問題はありませんでしたが、再生品なので、途中何か混ざってしまったのか、その原因は明らかにならないまま解決策も出せずに終わってしまいました。
別のPPシート工場に再生品を出して欲しいと社長さんに直接お願いをしに行きましたが、安定したものは出せないので供給出来ないと頑なにお断りされました。
再生品は印刷適性だけでなく、耐久性や耐候性など、その品質を保証することが出来ず、さらに再生材料が安定的に確保できる保証もないのであらためてその製品化は難しいと当時実感した記憶があります。
3実はPVC素材は他のプラスチック素材よりも省資源でかつCO2削減に寄与しています
PVCは塩化ビニル、塩ビと言われるだけあって原料の60%が塩素で、残りの40%は石油からつくられるエチレンが原料で、100%石油からつくられる他のプラスチック素材より石油を使う量が少なく石油資源の節約に貢献している環境にやさしい素材です。
PVCは製造段階でCO2の排出量が他のプラスチックに比べ3割ほど少なくCO2排出量削減に寄与し、資源・工程の合計エネルギー負荷が少ない素材といえます。
4プラスチック五大汎用樹脂の生産割合とマテリアルリサイクル率
プラスチック全体の2020年総生産量は963万トン。
そのうち五大汎用樹脂が全体の約80%を占めています。ポリエチレン(PE)23%、ポリプロピレン(PP)23%、ポリ塩化ビニル(PVC)17%、ポリスチレン(PS)11%、ポリエチレンテレフタラート(PET)4%です。
五大汎用樹脂の廃棄物を回収し製品の原材料として再生利用するマテリアルリサイクル率は、PE 13%、PS 13%、PP 22%、PVC 32%、PET 70%です。
PET樹脂のが高いのは、用途割合の高いPETボトルのリサイクルが進んでいることが起因しているようです。
5ゴミをほとんど出さない再生PVCシート工場を見学しました。
先日再生PVCシート工場を見学しました。材料は、裁断場やウェルダー工場ででた端材(はざい)です。それを200℃を越える2本のローラーの間に何度もくぐらせ、練り直します。その際に顔料も加え、色を調整します。
熱が冷めないうちにカレンダーと呼ばれるシート製造機に流し込み、シート上にしていきますが、流し込む際にストレーダーというメッシュを通して異物をはじきます。カレンダーから出る時には両面にシボがかけられます。
決めた幅に端をカットし、カットして残った端材も再度再利用します。
材料は端材なので、同じ色で大量というわけではないので、色ブレしないように色調整の際も小ロットに分けるのですが、逆に生産ロットも100mから可能で、バージンの3000mからと較べるととても小回りがききます。
廃棄されるものを生き返られる現場は活気もあり、環境に優しく気持ちがいいと感じました。
6リサイクルフィルムの色合わせのコツ
プラスチック樹脂をリサイクルして再生産する際、色味も調整することが可能です。基本的には同系色に再生する方が新たに加える顔料が少なくて済み、調整しやすいのですが、いくつか条件があります。
薄い色を濃い色に再生するのは可能ですが、その逆は出来ません。一度加えてしまった顔料を引くことは出来ないのです。
どんどん濃い色に再生を繰り返すと黒になるかというとそういうわけでもありません。
もし加えた顔料に白が混ざっていると、顔料を何度も加えても黒にならずに、灰色になります。
これは、白の顔料に含まれている酸化チタンが、黒になることはないからであります。また色調整する際に難しいのは、仕上がりのシボによって色の濃淡の見え方が微妙にずれるので、色調合させる際はそのズレを読んで顔料を加えていきます。
7ミニマルな生活と環境問題
モノを持つことが豊かだとされ、大量生産大量消費の高度経済成長を経て、いつでもどこでも欲しいモノを手にすることが出来るようになった現在、「自分にとって必要なモノだけを持ち、豊かに生きる」ミニマルな生活を好む人が出始めました。
全世界で1000万部読まれている近藤麻理恵さんの著書は、ときめかないモノは全て捨てて、自分自身がときめくモノだけにするという、単なる整理整頓本というより、いかに限られたものだけで豊かに生きるかという生き方の本でもあります。
自分が選んだモノだけに囲まれて生活する時代が到来した今、地球環境に優しいものを選ぶようになるのは世界的に自然な流れだと思います。
8エシカル消費と環境問題
大量生産大量消費の時代が終わった今、地球環境、地域社会、人や社会に配慮した「自分に良くてさらに人や社会に良いモノを選択する」エシカル消費を意識する人も出始めています。エシカルとは、倫理的・道徳的という意味。社会的な課題に気付き、日々の消費生活を通してその課題解決のために自分に何が出来るかを考えながら消費生活を送るようになってきています。
具体的には、地球環境により優しい商品を選ぶ、マイバッグやマイボトルを利用する、食品ロスを減らす、ゴミの分別の徹底などです。
我々モノを扱う企業体はそのことを強く意識しながら、社会にとって良いものを提供するという姿勢を再確認していきます。
9プラスチック使用量を減らす フランスの歯ブラシ
フランスのスーパーで買い物するYouTubeを観ていたら、ブラシの部分だけを買い替えられる歯ブラシが売られていました。プラスチック使用量を減らすための商品だそうです。日本のネット上で探しましたが、見つけることは出来ませんでした。
日本でも発売されてもいい商品だと思います。
10PVCレザー、PUレザーでエコ素材はあるのか
ずばり、日本では1社のみ生産が可能です。もともとPVCレザー、PUレザーは家具や手帳カバー、自動車シートに使用されています。それらの生産量は年々減少し通常のPVCレザー、PUレザーの生産をする工場も日本では残りわずか5社となってしまいました。
しかもそのうち3社は自動車シートに特化して生産しているので、残り2社からのみ指定の代理店を経由して材料を購入することが可能です。その2社にバイオマスやリサイクル、生分解なのどのエコ素材があるか確認したところ、1社からバイオマス材料使用のものと、リサイクル材料を使用したものがあると回答いただけましたが、在庫はなく別注となり、生産には5000m以上のオーダーが必要となるそうです。